【編集部について】 志望動機.comは、大学入試広報・進路指導に特化したWebメディアである。総合型選抜の経験者ライターや入試広報コンサルタントを含む編集部が、実際の支援・取材・受験体験をもとに記事を制作している。これまで延べ50校以上の大学広報支援および受験生サポートを通じて得たノウハウを発信している。
【担当選出メモ】 カテゴリ「志望動機・自己PR文例」「総合型選抜・AO入試」に該当。みおさん(総合型選抜経験者・受験生目線)を優先担当、はるかさん(入試広報・大学側視点)を補佐、けんさんをデータ・構造面で補完として配置する。
はじめに|「正義を実現したい」は、なぜ弱い志望理由なのか
法律学科の志望理由書で、毎年最も多く見られる書き出しがある。「社会の不正義を正したい」「弱者の権利を守りたい」──方向性は正しいが、この一文だけでは審査官の記憶には残らない。
法律学科には、まったく同じ出発点を持つ受験生が何十人も書類を出してくる。差がつくのは「動機の強さ」ではなく、**「動機の根拠がどれだけ具体的か」と「入学後・卒業後の姿がどれだけ解像度高く描かれているか」**の2点だ。
本記事では、法律学科の志望理由書を書くための5つのポイントを、書いてしまいがちな失敗パターンと合わせて解説する。「書いたけれど薄い気がする」という段階の人から、「そもそも何から手をつければいいかわからない」という入門段階の人まで、読み終えたら自分の言葉で書き始められる内容に絞っている。
ポイント① 「法律に興味を持った瞬間」を一つの出来事に絞る
対象:志望理由が抽象的で広がりすぎていると感じる人 / 難易度:★☆☆
「社会問題に関心を持ち」「ニュースを見て考えるようになり」という書き出しは、どこの大学のどの学科の志望理由にも使い回せる文章だ。法律学科の審査官が聞きたいのは、「あなたはいつ、どの瞬間に法律という存在を意識したか」という、替えの利かない体験だ。
動機のきっかけは、規模の大小を問わない。アルバイト先で不当なシフト変更を経験した、家族が相続問題で困っているのを目にした、文化祭の出店準備で契約書の存在を初めて知った──どれも「法律が現実の問題と直結している」という気づきの原体験になりうる。
文科省「令和6年度学校基本調査」によれば、法学・政治学系への進学者数は近年も安定して推移しており、法律学科の志願者数は私立・国立ともに一定の競争率を保っているとされている。それだけ「似たような動機の受験生」が集まりやすい学科でもある。
やってはいけない書き方
「社会のニュースを見て、法律の重要性に気づきました。」 → 何のニュースで、どう気づいたかが一切書かれていない。審査官の印象に残らない。
良い書き方の骨格
「高校2年の夏、アルバイト先で〇〇という状況に直面した。そのとき〇〇という法律の存在を初めて調べ、法が個人の権利を守る具体的な道具であることを実感した。」
みおさんのコメント
私が総合型選抜を受けたとき、面接官に「そのニュースを見てどう感じたか」と聞き返されて詰まった経験があります、動機は「何が起きたか」より「自分がどう動いたか」まで書くと強くなります!
ポイント② 法学部・法律学科・他学部の違いを一言で説明できるようにする
対象:「なぜ法学部か」を面接で問われると答えに詰まる人 / 難易度:★★☆
「なぜ政治学科や社会学部ではなく法律学科なのか」は、面接・書類審査の両方で確認される定番の問いだ。ここで「法律が好きだからです」という回答では、志望の輪郭がぼやける。
参考として、近接する学問領域との違いを整理しておく。
| 学部・学科 | 主な問いの立て方 |
|---|---|
| 法律学科 | 「ルールはどうあるべきか」「権利はどう守られるか」 |
| 政治学科 | 「権力はどう動くか」「政策はどう決まるか」 |
| 社会学部 | 「社会はどう構成されているか」「集団の行動はなぜ起きるか」 |
| 経済学部 | 「資源はどう配分されるか」「市場はどう機能するか」 |
「私は〇〇という問題に対して、社会の仕組みではなく、権利と義務の枠組みから考えたい。だから法律学科を選んだ」という論立てができると、学科への理解の深さが伝わる。
はるかさんのコメント
実際に支援した大学では、隣接学部との違いを自分の言葉で語れた受験生は、面接の評価が書類段階より上がるケースが複数ありました!
ポイント③ 法律学科の中で「どの分野に興味があるか」を一つ決めておく
対象:「法律全般に興味があります」で止まっている人 / 難易度:★★☆
法律学科のカリキュラムは広い。憲法・民法・刑法・商法・行政法・国際法・労働法・環境法──受験生がすべてを把握している必要はないが、「自分が特に関心を持っている分野」を一つ挙げられるかどうかで、志望理由の解像度が大きく変わる。
分野を選ぶときのヒントは、自分の動機の原体験から逆算することだ。
- アルバイトでの不当な扱い → 労働法
- 家族の相続・不動産問題 → 民法
- 企業の不祥事や消費者問題 → 商法・消費者法
- 報道・表現の自由 → 憲法
- 環境問題・行政の対応 → 行政法・環境法
- 国際的な人権問題 → 国際法・国際人権法
「〇〇という体験から労働法に関心を持った。入学後は労働法のゼミで実態調査に関わりたい」というように、分野の名前と自分の体験・入学後の行動を接続すると、審査官の目に留まりやすい記述になる。
みおさんのコメント
「憲法が好き」と言っても範囲が広すぎるので、「表現の自由と名誉毀損の境界線に関心がある」くらいまで絞ると面接でも話しやすくなります!
ポイント④ 「弁護士になりたい」以外の将来像も視野に入れる
対象:「将来は弁護士を目指します」で文章が終わっている人 / 難易度:★★☆
法律学科を出た後のキャリアは、司法試験・弁護士だけではない。法学部出身者の実際の就職先は、一般企業(法務部門)・公務員・行政書士・司法書士・研究者・NGO・金融機関・保険業界など多岐にわたる。
「弁護士になりたい」という将来像は間違いではないが、それだけでは審査官に「なぜこの大学の法律学科でないといけないのか」が伝わらない。
将来像を書くときの有効な構造は以下のとおりだ。
① 解決したい課題・関わりたい問題を示す 「〇〇という社会課題(または身近な問題)に対して」
② その課題に法律でどう関わるかを示す 「法的な知識と交渉力を使って〇〇したい」
③ 具体的なキャリアの方向性を示す 「そのために〇〇(職種・分野)を目指している」
「ソーシャルビジネスを展開するNPOの法務担当として、契約と権利保護の仕組みを整えたい」のような将来像は、弁護士志望より少数派であるぶん、審査官の印象に残りやすい。
はるかさんのコメント
大学の入試担当者への取材では、「司法試験を目指す」という回答より「企業法務で〇〇に取り組みたい」という具体性のある将来像の方が面接での展開が豊かになるという声がありました!
ポイント⑤ 「その大学の法律学科でなければならない理由」を1文で言えるようにする
対象:どこの大学にも使い回せる汎用文章になっている人 / 難易度:★★★
志望理由書の審査で最も差がつくのが「大学固有性」だ。志望校のシラバス・ゼミ紹介・担当教員の研究テーマをオープンキャンパスや公式サイトで調べ、「この大学の法律学科だからこそ」という要素を1つは盛り込む必要がある。
固有性の作り方は3パターンある。
- 教員・ゼミの固有性:「〇〇教授が専門とする労働法のゼミで、判例研究に取り組みたい」
- カリキュラムの固有性:「1年次から模擬裁判プログラムが設置されている点に惹かれた」
- 連携・実務の固有性:「法律クリニック(法律相談実習)が設置されており、在学中から実務経験を積みたい」
リクルート進学総研「進学センサス2023」によれば、大学選択の決め手として「学べる内容・カリキュラム」を挙げた高校生は63.2%にのぼるとされている。それだけ多くの受験生がカリキュラムを調べているということは、調べた内容を志望理由に組み込めているかどうかが差別化の基準になっているということでもある。
けんさんのコメント
ウェブ解析士としての観点から見ても、大学のゼミ紹介ページや教員の研究業績ページまで読んでいる受験生は、志望理由書の言葉の密度が明らかに違います!
文例|法律学科・志望理由書の骨格(400字バージョン)
上記5ポイントを組み込んだ志望理由の文例を示す。下線部を自分の体験・志望校の情報に置き換えて使う骨格として活用してほしい。
私が法律学科を志望したのは、高校3年のとき、アルバイト先で突然の雇い止めに遭遇した体験がきっかけである。自分や同僚が何も主張できないまま状況を受け入れていたことへの違和感から、労働者の権利を保護する法制度の仕組みを独学で調べ始め、法律が「知っている人にだけ機能するツール」になっている現実に問題意識を持った。
貴学法律学科を志望するのは、〇〇教授が専門とする労働法・社会保障法のゼミで、判例研究と実態調査を組み合わせた研究に参加できる環境があることに強く惹かれたからである。また、3年次から設置される法律クリニックを通じて、実際の法律相談を学内で経験できる点も志望の決め手となった。
卒業後は、中小企業や個人事業主を対象とした労務管理の法的支援に携わる専門家として、「知らないから損をする」という構造を変えることに貢献したいと考えている。
まとめ|この記事で押さえた5つのポイント
- 原体験を一つに絞る:「社会問題への関心」ではなく「あの瞬間」を書く
- 隣接学部との違いを語れる:なぜ政治学・社会学でなく法律かを一言で言える
- 興味分野を一つ絞る:「法律全般」より「労働法」「憲法」など具体的に
- 将来像は課題×関わり方で構造化する:職種名だけでなく何を解決したいかを示す
- 大学固有性を1文盛り込む:ゼミ・教員・カリキュラムのいずれかを具体的に
これから書き始める受験生にはポイント①の原体験の特定から着手することを推奨する。「書いたが薄い」と感じている受験生は、ポイント⑤の大学固有性を追加するだけで文章の説得力が大きく変わるだろう。
志望動機.com編集部|みお(総合型選抜経験者ライター)・はるか(編集長)・けん(副編集長)
